「入門 考える技術・書く技術」の読書メモ
www.diamond.co.jp
全体を通しての感想
バーバラ・ミント氏著のピラミッド原則をまとめた「考える技術・書く技術」に対する、「日本人による日本人のための実践ガイド」とまえがきで述べられています。
全168Pと文量が少ないのと、本書の題材の通り簡潔な文章でまとめられているため、非常に読みやすい内容でした。
自分は業務でデータ分析の結果をまとめたドキュメントを書いています。
同僚のドキュメントを真似て自分なりのルールでドキュメントを作成していました。
質の高い技術文書を書く方法 - As a Futurist...
の記事を読み、文章を書く技術を体系的に学ぼうと思ったのが本書を読み始めた動機です。
本書はビジネス職向けの内容ですが技術文章にも使える汎用的な内容となっていました。
本文が4章のうち3章が考えるプロセスについての内容となっているため、論理的に考える技術がそのまま書く技術に繋がっているのが分かります。
序章. 誤解だらけのライティング
- 誰も教えてくれなかったレポート・ライティング - 誤解1 書きたいことを書きなさい - 誤解2 起承転結で書きなさい - グローバル・スタンダードを学ぶ - レポートを受ける立場になって読んでみる - 考えるプロセスと書くプロセスを分ける
日本の教育がライティングを学ぶ機会がないことを指摘しています。
- 作文や感想文のような自分の書きたいことを書く教育が行われる
- 読み手のために書くライティングの基本が欠如してる
- 起承転結で書く教育から、結論を最後に書く習慣が染み付いてる
- 結論を冒頭に書くビジネス文書の原則に反する
本文に入る前のウォーミングアップとして、読み手の立場を考えたライティングの流れを紹介しています。
結論が最後に書かれた場合と、結論を冒頭に書き判断根拠を箇条書きで分かりやすく表現した場合を比較しています。
両者の違いは「書くプロセス」ではなく、前段階の「考えるプロセス」にあると指摘しています。
考えるプロセスを行うためにピラミッド原則を取り上げています。
以降の本文でピラミッド原則に則ったライティング方法が書かれています。
1章. 読み手の関心・疑問に向かって書く
- 読み手は何に関心を持ち、どんな疑問を抱くのか - 読み手の関心を呼び起こすには - 読み手の疑問を明らかにする「OPQ分析」 - OPQ分析のコツ
ビジネス文書は読み手の疑問に対する答えが伝えるべきメッセージであり、それ以外の関心のないテーマは読まれないと言い切っています。
なので、読み手の理解がビジネス文書を書くための最重要ポイントとしています。
読み手の疑問と伝えるべきメッセージを、問題報告書・販売企画書・セミナーへの案内状・履歴書に添えるレター・クライアントへの提案書を例に書かれています。
読み手を分析する手法としてOPQ分析を取り上げています。
- Objective (望ましい状況)
- 読み手が目指している望ましい状況
- Problem (問題. 現状とObjectiveとのギャップ)
- 解決すべき問題
- Question (読み手の疑問)
- 問題に直面した読み手が、その解決に向けて自然に抱くだろう疑問
- Answer (答え. 文書の主メッセージ)
- 読み手の疑問に対する答えが、そのまま文書の主メッセージになる. 疑問(Q)に忠実に答えることが大切
- レール(トピック)
- OPQAの内容を同じモノサシで比べる
OPQ分析のコツを3つあげています
- すべて読み手の視点で表現する
- 比較のレール(トピック)を外さない
- 文書の主メッセージはQに直接答える
OPQ分析の練習問題として、売り上げ目標の達成・不良資産の発覚・在庫削減か売り上げ増かを扱う際のOPQAを例示しています。
2章. 考えを形にする
- メッセージの構造を明らかにする - 一度に覚えられる数には限界がある - メッセージ構造をそのまま文書へ - グループ化と要約メッセージ - メッセージが一般論にならないようにする - 要約メッセージを文章にするときの「4つの鉄則」 - 鉄則(1)名詞表現、体言止めは使用禁止とする - 鉄則(2)「あいまい言葉」は使用禁止とする - 鉄則(3)メッセージはただ1つの文章で表現する - 鉄則(4)「しりてが」接続詞は使用禁止とする - 「So What?」を繰り返す
読み手は内容を理解するために受けとった情報をグループ化し、理解可能な考えの数に収めようとします。そのため書き手が情報をグループ化することで、読み手の負担を減らせると指摘しています。
ピラミッド型に組み立てたメッセージ構造がそのまま文章構造となります。
考えを組み立てるプロセスは2種類の作業があるとし、2つの作業で相互チェックしながら考えを組み立てていきます。
- グループ化し、要約メッセージを探す
- メッセージに従って、グループを作る
「グループ化」と「要約メッセージ」がピラミッドの要となる。
要約メッセージ作成の注意点として、一般論にならないようにすると述べられています。
多くの人が全てをカバーできそうな包括的・抽象的な言葉を選んでしまいがちであると指摘しています。
決定的な言い回しを避けて、曖昧さを残した言葉を選ぶ経験が自分にもあったので反省しました。
要約メッセージを作成する際の4つの鉄則が述べられています
- 名詞表現、体言止めは使用禁止とする
- 「あいまい言葉」は使用禁止とする
- メッセージはただ1つの文章で表現する
- 「しりてが」接続詞は使用禁止とする
1つ目の鉄則の例に
のメッセージから考えられる要約メッセージの悪い例として「東南アジア市場の推移」という言葉が挙げられていました。
文章ではありませんが、自分がよく行なっている分析データの見出しにも通じるものがあるなと思いました。
4つ目の鉄則の、論理的な関係が明確でない「しりてが」接続詞は、「...し、…」「…であり、…」「…して、…」「…だが、…」「…せず、…」「…なく、…」という言葉です。
3章. ピラミッドを作る
- 帰納法でロジックを展開する - 帰納法の仕組み - 「同じ種類の考え」を前提とする - 帰納法は「つなぎ言葉」でチェックする - 結論を先に述べる - 演繹法でロジックを展開する - ビジネスで演繹法を使う際の注意点 - 演繹法は「前提」をチェックする - ピラミッド作成のコツ - コツ(1) 1つの考えを短く明快に - コツ(2) 縦と横の「二次元」を意識する - 1対1の関係に要注意 - 1対1の番外編「イメージによる説得」
ロジックの基本である帰納法と演算法を紹介しています。
帰納法とは複数の特定事象(前提)から、要約(結論)を導くロジック展開です。
帰納法の表現スタイルは「私の言いたいことは、…です。理由は3つあります。第一の理由は…、第二の理由は…、第三の理由は…」となります。
演算法とは絶対に正しいことや、一般的に正しいと判断されること(前提)から、妥当と思われる結論を導くものです。
演算法は一見すると流れがスムーズなので、それが帰ってロジックの誤謬を気付きにくくさせると注意しています。
ピラミッド作成のコツを2つ取り上げています
- 1つの考えを短く明快に
- 主メッセージとキーラインを早めに決める
- ピラミッド内で文章を書こうとしない
- 縦と横の「二次元」を意識する
- 縦の関係
- 上が結論で下が根拠・説明の関係
- 横の関係
- 結論を導くロジックの流れ
- ピラミッドの縦横を無視しない
- 縦の関係
4章. 文章で表現する
- 文書全体の構造はピラミッドに同じ - ケース「X事業投資」 - 主メッセージの位置 - 目次のつけ方 - 段落表現のビジネス・スタンダード - 段落は「改行+大きめの行間」で - 文章のわかりやすさは「接続詞」次第 - ロジカル接続詞 - 「しりてが」接続詞の使用ルール - 曖昧な接続詞は誤訳のモト - 読み手を引きつける「導入部」 - OPQ分析を使って導入部を作る - 「結び」で今後のステップを示唆する
考えるプロセスで作ったピラミッド型のメッセージ構成を崩さず、そのまま構造が見えるような文章で表現するのが書くプロセスでは大切と述べています。
文書表現の基本は以下を挙げています
- メッセージごとの固まりが一目でわかるようにする
- 各メッセージ文を固まりの冒頭に配置する
- ピラミッドのメッセージをそのまま形にする
段落表現の基本は以下を挙げています
- メッセージごとに段落を作る(1段落1メッセージ)
- 段落の違い(メッセージの固まり)を明確に表現する
- 段落のメッセージ文を段落の冒頭に置く(主メッセージ同様、例外的に段落の最後に置くこともある)
ビジネス・ライティングでの段落の作り方を「改行に加えて、通常より大きめの行間を設ける」ことで段落の違いを目立たせると説明しています。
この段落の作り方はあまり意識したことがなかったので、実践してみようと思いました。
文章のわかりやすさは「接続詞」で決まると説明されています。
しりてが接続詞の「and接続詞」は使わず、因果関係を表すロジカル接続詞だけを使うよう推奨しています。
導入部はメッセージを何人もの読み手を対象とする正式な文章やプレゼン資料では不可欠なものと述べています。
導入部はOPQ分析を使って、読み手の関心をひく方法を紹介しています。
終章. メール劇的向上術
- メールが見違えるように変わる「感謝の言葉にPDF」 - 「1日1回ピラミッド」×4カ月
メールの書き方の方法に「感謝の言葉にPDF」という合言葉を使った方法を紹介しています。
- 感謝の言葉
- いきなり本文に入らず、簡潔に1, 2行を使って感謝の言葉を述べるようにする
- 「感謝の言葉」が自分勝手なライティングのブレーキになる
- P(主メッセージ部分)
- Purpose Statement (目的文)
- D(詳細)
- Detail (詳細)
- 主メッセージの理由・判断根拠・内容説明・具体案
- PとDがメール本文になる
- F(今後のアクション)
- Follow-Through(フォロースルー)
- 読み手に求めるアクション・自分のアクションの説明